行者岩

木曽駒ヶ岳山頂から東方側の茶臼山の手前に、巨岩が集積されたような箇所があり、そこで役小角(えんのおづの)行者が修行したとの伝説があり、行者岩と呼ばれています。

この行者岩を通る道は、昔は、木曽からの登山道(福島Bコース茶臼山ルート)として、修験者や講(こう)の人々が利用していました。今でも茶臼山の山頂には祠があります。この付近から山頂方面を望むと、先ほどの巨岩が衣をまとって座禅を組んでいる人のように見えます。行者岩には大きな空洞があって、古銭や御幣が残されており、行者が修行した痕跡が見られます。石穴の入口には駒嶽、保食神(うけもちのかみ)の碑があり、駒ヶ岳が間近に望めます。しらび平線のバスの中で、中央アルプスは北は経ヶ岳から、南の恵那山まで、長さ90キロと説明されますが、高山帯要素を呈している地形は茶臼山から南越百山までです。

修行した岩穴
修行した岩穴
役小角行者は、修験道の開祖とされています。修験道は山へこもって厳しい修行を行う事により、悟りを得ることを目的とする日本古来の山岳信仰が仏教に取り入れられた日本独特の混淆宗教です。高い山や深山に踏み入り、合目という行場で修行を行うことによって超自然的な能力「験力(げんりき)=(霊験をあらわしうる能力)」を得て、衆生の救済を目指す実践的な宗教でもあります。修験道の行を達成し、修行を達した人を修験者とか山伏と呼んでいます。

登山道の合目に付いて

信仰登山で開けた山には、登山道に一合目から十合目という場所があります。

これは修験者が修行する行場で、先達という行者に連れられて各合目で修行を行い、身を清めて登りました。当時初心者は一気には山頂に行けず途中で泊まりながら登りました。

木曽駒ヶ岳のいくつかの登山道は今も登られていて、信仰登山の名残のある場所もあります。

  北御所登山道 内の萱登山道 上松登山道 福島登山道(キビオ登山道)
一合目 地蔵平 桂木場 東里2区 福島駅
二合目 大根穴 ちりめん坂 アルプス山荘 駒の湯
三合目 蛇腹沢 野田場 敬神の滝 キビオの頭(木曾見台)
四合目 清水平 馬返し 四合目 四合目
五合目 ウドン坂の頭 大樽小屋 金懸小屋 上松
六合目 一丁ヶ池 やっとこ平 ラクダの背の岩場 避難小屋
七合目 船窪 津島神社   避難小屋
八合目 前岳の手前 濃が池分岐 遠見場大ナギ手前 山姥(水場)
九合目 中岳 馬の背の頭 玉の窪 玉の窪
十合目 山頂 山頂 山頂 山頂

北御所道、上松道以外は信仰登山道として開けたのではなく大正に入ってから付けられた道もあります。これらの合目は、修験道十界修行にちなんでいます。

修験道十界

一合目 地獄界 忍苦行。あらゆる苦に耐える。暑さ・寒さ、風雨に耐え忍ぶ。

二合目 餓鬼界 足知行。空腹、喉の渇きに耐える。身体鍛錬・忍耐の習得。

三合目 畜生界 労作行。生命確保。重たい荷物に耐える。あり難いと感じ、苦にしない。

四合目 修羅界 精進行。入峰仲間に世話をかけないよう、遅れないようにがんばる。

五合目 人間界 抖藪行。六根清浄と唱えつつ登拝。罪滅ぼしの懺悔をする。

六合目 天上界 歓喜行。緑豊な美しい日本の山峰に悦びが心から充ちる。

七合目 声聞界 聞法行。先達に従い、喜んで教えを聞き法の悟りを聞く。学ぶ状態。

八合目 縁覚界 沈思行。山峰たなびく雲・風・水の音など仏様の説法と自ら悟る「悟りの状態」。

九合目 菩薩界 奉仕行。己を忘れ入峰新客を導き励まし助け合い心から奉仕。「行動」

十合目 仏 界 感謝祈祷。山中大自然と一体化し仏性仏心が満ち溢れる。「無の境地」