安全で楽しい山登り

伊那谷にある中学校は(上下伊那)大正時代より2年生になると登山を行っています。
この年代の生徒の殆どが人生で初めて高山(這い松帯)に登るわけであり、登山に対する不安や期待は計り知れないものがある。

この感受性豊かな時期に自然に対する理解を肌で体験する事は、その後の人生に大きな影響を及ぼします。私達は(インタープリター)はその手助けの一助を担う者として、自然と人間との関わりや自然の大切さ・楽しさ・素晴らしさ・厳しさ等・諸々を教え「楽しく・安全・確実」に登山ができるようにと考えています。子供らがこの登山を機に自然に親しんでもらいたいと思います。そして長い人生の中での大きな一節となる事を念願しています。

下見登山

学校集団登山を安全に成功させるには、色々な作業や下準備・情報収集・トレーニングなどがあるが、登山するコースを歩き計画に間違いがないか? 計画通り実施できるかどうか?等検討するためにする下見登山は重要な工程である。と言うよりも本登山行動の一部である。したがって各校の責任において行動する本登山と同じように、各校の責任で行うと言うのが主旨である。しかし同じ日に同一行動するならば隊を作り責任者を明確にするべきである。

登山時期

戦後木曽駒ヶ岳登山が再会されてから地元の中学校では7月の梅雨期から7月末までに集中している、前半は梅雨の真っ最中でもあり、天候不順で子供達に登山の厳しさのみ印象付ける結果を招いて一部で登山離れを招いている。悪天候の場合は避けるのが登山のルールであり基本である、登山のルールを無視した登山行動は根本的に見直す必要がある。従って今後梅雨明けから9月初旬までの長い期間で天候の安定した時期を選ぶようにすべきである。

装備と食料

木曽駒ヶ岳を登山する中学校の殆どが北御所コースを登りに使用するが、登山口(北御所登り口)から稜線付近の山小屋まで8時間から9時間掛けて登り、天候がよければその日のうちに山頂に登頂するとなると更に2時間位の行動をしなければならず、朝起きてから夜山小屋で寝るまでの行動時間は15時間から18時間と長くなる。特に早朝身体のリズムが整わない内に登山行動を起こさなければならず、水分補給・エネルギー補給が重要となる。又これに伴う装備は登山行動に合った機能性が要求される。

米・味噌・野菜を持参するのは30年以上前の物資が不足していた時の登山形態を、そのまま引き継いでいて、現代の登山形態にはそぐわない。 中学生が一泊二日の木曽駒登山での総重量は10キロ未満に抑えるようにする。できれば7キロ位が理想的である。装備・食料は必要最小限にする 標準食料・装備は別紙とする

  • 下着
    保温性に優れ速乾性に富んだ物が良い。肌着兼用のポロシャツ・Tシャツ等(量販店に格安である)綿製の下着は吸湿性には優れているが登山行動では速乾性が無く、全く不適である
  • ザック
    縦長の30~35リットル位で大きさが調整でき、防水生地を使用した軽い物、デイ・ハーフバックは好ましくない。ましてサイドポケットの大きなハイキングリックは不可、又荷物の詰め方は背中にあたる部分には、行動中使わない着替えなどの衣類を入れ、行動食や水はすぐ取り出せるように入れる。雨具もすぐ取り出せるよう入れ、重心が下にこないようなパッキングが必要です。 更に音のしない防水袋(ナイロン袋)に全体を入れて汗や雨の浸透を防止し、ザックの加重が腰にこないように肩と背中で加重を分散するような背負い方とする。 ●雨具 登山装備の中で最も重要な物であり、耐水圧10,000mm/c㎡以上 透湿性3,000g/㎡(24h)・防風性に優れた素材を使用した物でフード付セパレーツ形 で靴を脱がずに履けるズボン(裾がファスナー等で開く)物でウィンドブレーカーにも代用できる物。
  • 手袋
    アクリル100%か、毛100%が最も望ましく、綿の軍手は不可
  • 防寒着
    厚手セーター・フリース上着・薄手の羽毛服等空気の層が沢山できる物
    但しフリース、セーターは防風着と併用する

  • 歩く事が基本な登山では足首が固定できる(ハイカット)ハイキングシューズが捻挫防止や下りでの足首・膝への負担を軽減るため理想的である。しかし底が固く、突起があり、岩や砂礫に対して摩擦力に優れた物でも良い。(スニカーは不適当)
  • 帽子
    雨降りでも使用できるアクリル製の雨等に濡れても乾き易い素材で、つばのある後頭部を日射から保護できる物

  • 人間は運動すると体温が上昇し続けて疲労が起こる。(エンジンで言えばオーバーヒートに相当する。そこで冷却水で冷やさないとエンジンストップとなる。) 木曽駒ヶ岳登山の登りでは、その日の気象条件にもよるが体重60キロの人が登山口から山小屋まで平均8時間行動とすれ、脱水量は5g×体重×行動時間であるが水は重いのでこれだけは持たなくてもよい。脱水量が体重の2%以下にとどまるようにする。そのための試算では次のようになる
    飲水量=(5g×60k×8時間)-(20×60k)=1200gつまり1.2リットルの水を補給する しかし補給方法や種類(塩分)との関係など一概に飲めばよいとは言えないが、500gのペ ットボトル3本あれば良い。これを最低1時間に1回(理想的には30分に1回)飲めば よい。したがって北御所コースで8時間行動するならば13回~15回の水分補給となる。 しかし多量の汗をかくと汗と一緒に塩分も失われ、筋肉中の電解質のバランスが崩れ痙 攣が起こるので生理食塩水やスポーツドリンクの補給も必要である。身体内の水分不足 分は小屋の食事の時補給すると良い。(暖かいお茶を確り飲む)
  • 食料
    登山は長時間行動のため膨大なエネルギーを消費する、マラソンと比べると時間当たりの消費量は少ないが、行動時間から見るとマラソンの3~4倍のエネルギーを消費する
    (マラソン2,000cal~2,500cal・登山8時間で5,000cal~7,000cal)
    (自動車で言うとエネルギーはガソリンであり、これが切れるとガス欠でエンジンストップとなる。)
    登山の燃料は炭水化物と脂肪で酸素によって燃やし、その時に出るエネルギーで筋を動かしたり、脳や神経系を働かせている。
    脂肪は体内に膨大に蓄えられているが、炭水化物はごく少量しか蓄えられず(炭水化物は1・5時間分しか蓄えられない)、脂肪を燃やすには炭水化物が必要であり、いわば脂肪を燃やすための燃焼促進剤である。 このエネルギー補給のため中学生登山では行動食として朝飯・昼飯をおむすびを持参するのが一般的であり、1食を2回以上に分けて摂ると良い。(持続的にエネルギーを補給する)木曾駒ケ岳登山では通常時間当たり600cal~700calが必要であり、炭水化物と脂肪を半分づつ燃やしても3時間でガス欠となる。食べた炭水化物がエネルギーになるには30分以上かかる、このためガス欠前に少しずつ補給する。 行動食は、バテないための補給しか出来ず、これを補うために山小屋ではバランスの良い食事をするよう選査する必要がある。

バテない(疲労しない)登山

登山の目的は、登る人達によっても異なるが、まず楽しい登山であれば、きびしくても疲れは半減する。特に基本方針でも述べたように、人生で初めて高山にチャレンジする者にとっては楽しい登山でなければ、その意味も失われる。そのための環境作りとして、色々な準備や方法が行われるが、その一つにバテない登り方も大きな要因である。 運動すれば全く疲れないというわけには行かないが、心地よい疲労は心の健康と心身のリフレッシュとなり強い達成感が得られる。

対象となる山域やコースを含めて先ず楽しい登山を計画する

  • 疲労と歩行
    初心者は、朝の元気な内は必ず早いペースで歩くが、ベテランはペース配分をし、ゆっくり歩く。歩き出しの1時間~2時間は呼吸を上げず心拍数も150拍/分以下で歩く。 そして30分~50分毎に小休止をし、心拍数の上がり過ぎを防ぐようにする。
    心拍数を上げるような早さで歩くと血液中に乳酸が増えて筋肉内に蓄積し疲労が起こる。(乳酸そのものは疲労物質ではなく、乳酸の発生に伴い同等の水素イオンが発生し筋中を酸性にして疲労が起こる)
  • マイペースの決め方
    心拍数を上げて歩くと疲労(乳酸)がたまるが行動中は計測が難しい、そこで心拍数を上げない歩き方は体力や年齢によって異なる。目標心拍数は下記の方法で求められる。 目標心拍数=(220―年齢)×0・75したがって中学生は140~150以上に上げないことが疲労を蓄積しない。
  • 下りの危険
    登山では登りは大変だが、下りは楽だという認識があるが心臓や肺が苦しくないからであり、下りの疲労は所謂筋肉痛と言われる筋細胞の破壊が起こる、これが筋肉痛と言う炎症である。又登山中の事故の90%は下りに起こる、これを防ぐには大腿四頭筋の強化と歩行技術の習得が必要である。ハイカットの登山靴は用具の面でこれをサポートしてくれる
  • 自然環境との付き合い
    中学生登山の中で最も感動し、その後の人生の思い出になる行為として、ご来光を拝することがある、古来人間の歴史の中での太陽神は世界各地にあり、ご来光を拝することは宗教や信仰の原点・即ち人の生き方と言うべき行為である。日本では山岳信仰でご来光を拝することは最も大切なこととされている。元来山に登るのは、ご来光を通じて山と(自然)と一体化し自然の神秘や壮大さを学ぶことであり、自然に対して畏敬の念を育て謙虚となることを肌で感じる。したがって最も大切な行為と言える。ご来光は寒い中・太陽の揚がるのを山頂でじっと待ち、山々が紫き色から紅に染まる自然のドラマを観察するのが本来である。
    伊那谷の中学登山では、持ち込んだゴミは持ち帰るようにしているが、山小屋でゴミを燃やしたりすると、地球の温暖化につながり自然に負荷を与える。 今まで自然との関わり合いが人間中心であったため、自然が失われ、破壊されて来た、その影響が高山植物や動物に影響し、いずれ人間にも影響する。
    次世代を担う中学生が登山で最も得なければならない登山の目的の一つに、自然との係わり合いについて重点的に学習できるような登山や自然体験も取り入れていく、登山形態や方法も含めて検討すべきである。(頂上登頂を目的としない自然観察など) 登山行動中での排便(登山口・清水平・小屋場)の処理は教育委員会など学校組織全体で考えるべきであるが、携帯トイレなどの使用を検討すべきである。又登山行動前に大便は済ませるようにする。
  • トイレットペーパー
    芯を抜いたロールペーパーを1/3巻きか、水に溶けるチリ紙を使用する。(テッシュペーパーは不可)
  • インタープリター人数
    登山行為が社会的に認知され一般化している現在では、専門的な知識や登山技術・経 験を備えたインタープリターの雇用は、安全で楽しい登山をするうえで重要な要素である。
    特に未成年者の集団登山においては、その登山隊の安全行動に重要な責任を負はなけ ればならない。登山隊の統括責任は隊長であるが、登山行動中の登山隊の指揮・指示・ 把握はガイドにある。したがって隊の規模に合ったインタープリターが必要である。 (日本ガイド協会や日本山岳協会では登山する山域によっても違うが、隊全体の全責任を負った場合は 5人から15人に1人のという基準がある。)
    北御所コースを登る中学生登山の場合は、先生が80人に4人付いた場合、生徒80人に1人のインタープリターを付けるのが最低である。
  • 医師・看護士
    中学生が初めて登山する場合は、酸素量の少ない高所の登山経験がないため体調に変調をきたす、或は不調を訴える場合があり、常日頃生徒の体調管理をしている医師・看護士の付き添いが理想であるが、高所医学や登山生理学に精通した人であることが望ましい。

個人装備 着用して行く物

品名

数量

重量g

仕様

半袖下着 

1

170

アクリル等の化繊・

下着下

1

120

靴下

1

130

毛・アクリル・絹

運動着上

1

400

学校指定アクリル製(綿混紡率20%以下)

運動着下

1

350

手袋

1

50

アクリル等の化繊軍手1・毛1(綿の軍手は不可)

帽子

1

100

野球帽タイプ(雨具のフードが垂れ下がらないような物)

1

520

ハイカットシューズ(防水性に優れた物)

タオル

1

75

汗拭き用

 

1,915

 

ザックに入れて行く物

ザック

1

1,300

縦型35リットル前後(容量に少し余裕のある物)660~950g物も在る

サブザック

1

200

ナップザック軽い物(山頂アタック時使用)

ザックカバー

1

100

ザックサイズにあった物 ビニールは不可

運動着下

1

350

学校指定運動着

下着上下長袖

各1

280

オーロン・シオジン・

靴下

1

130

アクリル系混紡率綿20%以下

手袋

1

35

毛・アクリル100%

防寒着

1

600

フリース・セーター・薄手の羽毛服(400)

雨具

1

800

セパレーツタイプ

ビニール袋

4

30

大2・小3 ビニール製(買い物袋は不可)

チリ紙

1/3

50

ロールペーパー(芯を抜き防水対策をする)

新聞紙

4枚

80

約一日分(1防水対策)

ビニール袋

1

50

ザックの内側に入れる(ザックより大きな物)

懐中電灯

1

60

軽くて小さな物ザックの中で点灯に注意)

電池

50

新しい物

常備薬

1

20

 

栞・歌集・資料

250

 

メモ帳・筆記用具

80

 

▲時計

1

60

 

▲カメラ

1

280

 

▲日焼け止め

1

20

 

 

4,825

 

共同装備(学校装備)

品名

数量

重量g

仕様

ツエルト

1

500

2~3人用各クラス1

レトルトのおかゆ

4

920

各クラス(食欲にない生徒用)

緊急飲料

812

練乳1・固形ブドウ糖5回分・ウエルダーinゼリー160cal3

携帯コンロ

1

490

ガス2時間分(隊に1)

コッフェヘル

1

300

セット(3人用)

修理具

200

裁縫用具・針金3m・ブライヤー・瞬間接着剤・ガムテープ3m・細引き5mm5m

真水ペットポトル

1

545

職員1人に500㏄づつ(裂傷・擦過傷の傷口を洗う)

携帯電話

1

120

予備電池・携帯充電器

無線機

2

425

隊2台以上 (アマチュア無線) トランシーバーは不可

予備電池

25

オキシライド電池など容量の大きな物

大きなザック

1

1,800

隊に1ヶ65リットル以上

医薬

500

 ファーストエイドキット (必ず用意する物テーピングテープ)

三角巾

10

75

職員1人に1枚

貼り付けカイロ

10

200

冷え腹・酸素不足による高山障害腹

▲携帯酸素

3

978

45分

▲ストック

1

265

 

8,155

 

登山食料 個人

品名

数量

重量g

仕様

おにぎり

2食

500

炭水化物で自分の好みで食べ易い物(1食3~6個60~80g)等(販物120)

副食

300

のど飴・クッキー・パン・氷砂糖・粒レモン・スナック菓子・カロリーメイト

非常食

294

練乳154・蜂蜜60・ブドウ糖30・板チョコレート50等

水分

1500

1,635

ペットポトルお茶・スポーツ飲料・水・クエン酸+アミノ酸パック

趣向品

450

ミニトマト・スライスレモン・りんご・みかん等

 

3,179

 

小屋に出す食材夕食分(登山食料として本来は米=アルファー米・野菜=乾燥野菜・味噌乾燥味噌)

▲無洗米

1

112

1食分(50人以上で男女半々の場合)ご飯にして258g

433.4cal

▲野菜

3

190

ジャガイモ100g・玉葱40g人参50g

109.3cal

▲豚もも肉

1

50

豚肉が不可の場合はシーチキン等

91.5cal

▲カレールー

1

  20

 

98cal

▲油

1

5

  必要calの89%

5cal

 

377

中学生1食標準必要cal=820(中学生のご飯は220g)

737.2cal

小屋に出す食材朝飯分  ▲印 場合によっては不携帯 

▲無洗米

1

112

1食分(50人以上男女半々)ご飯にして2杯半

433.4

▲野菜

3

100

ジャガイモ60ねぎ40

60cal

▲味噌

1

8

 

15.4cal

▲カット若布

 

1

 

1.4cal

鮭缶(味付け)

1

50

 

107.5cal

プロセスチーズ

 

20

 

67.8cal

 

291

      必要calの84%

685.5cal

 

標準休憩時間と食料&水分補給

●北御所コース

N0

地名地点

内容

時間

備考 

0

学校

トイレ

水分

 

登山口までカーブをゆっくり回る

1

北御所入り口

準備体操

間食

20分

トイレ・車酔い対策・隊列

2

林道途中

むすび

水分

8分 

1回目食事時間内で食べる

3

車澤

むすび

水分

15分~20分

2回目食事トイレ・男下方女子上方

4

清水平途中

間食

水分

5分

呼吸を整える

5

清水平

むすび

水分

15分

3回目食事トイレ男子山側女子谷側

6

5合目

間食

水分

8分

一箇所に集まる200人まで

7

一丁が池途中

間食

水分

5分

その場で休む

8

小屋場

むすび

水分

15分~20分

4回目食事トイレ女子長谷部新道

9

舟窪途中

間食

水分

5分

呼吸を整える

10

舟窪

むすび

水分

15分

5回目食事

11

八合目途中

間食

水分

8分

呼吸を整える

12

八合目

むすび

水分

15分~20分

6回目食事

13

宝釼山荘

むすび

水分

15分

トイレ休憩(お腹が空いている子)

14

中岳

間食

水分

8分

呼吸を整える

15

頂上小屋

むすび

水分

15分

トイレ休憩(お腹が空いている子)

16

山頂途中

間食

 

15分

 

17

山頂

間食

水分

20分

 

18

山頂小屋

間食

 

15分

 

19

中岳山頂

 

 

5分

 

20

宝釼山荘

 

水分

 

小屋のお茶